安全配慮義務と労働安全衛生法 

  労働安全衛生法では、労務提供時の危険防止と具体的な危険の種類に応じ、一般的に予想される労働災害の危険防止措置を行うように事業者に対して罰則を背景に強制しています。これは、事業者が守るべき最低限の事柄であり、自らが負う安全配慮義務の重要な部分ですが、そのすべてではありません。したがって、事業者が労働安全衛生法に基づく労働災害防止措置義務を果たしたとしても、必ずしも労働契約としての安全配慮義務を果たしたことにならない場合が生じます。すなわち、労働安全衛生法上の刑事責任を免れても、安全配慮義務違反による民事上の損害賠償責任を負う場合もあり得ることとなります。

中災防編「経営者の労働災害防止責任 安全配慮義務Q&A」より