災害防止のキーワード「具体化」 

  例えば、管理者であるあなたが安全担当者に「毎日の作業開始前に各種設備の安全措置に異常がないことを確認し、作業員の安全状況を監視しながら、災害防止に万全を期してください。」と指示することを想像してください。
  あなたは、この指示を受けた安全担当者に「さて、言われはしたものの作業開始前点検を行う各種設備とは、どの範囲かな?点検表のことは聞いていないぞ。各設備の点検する箇所は自分で考えるのか?異常の有無を判断する自信がないな~。」また、「作業開始前に点検するとなると、他の作業員より早く点検に取り掛からなければならないが、早出か?早出の手当ては?」またまた、「作業員の安全対策の遵守状況の監視?自分の仕事もあるし、どのようにやればいいんだ?」など、いろいろと考えさせてはいないでしょうか。また、悩ませてはいないですか?
  そして、この安全担当者は結局、何とか「形」だけ整えて、「実施しました」として報告することになっていませんか?また、指示した上司は、具体的内容を確認することなく、「形」の報告を受けて「指示事項ができている」と判断していませんか?
  もう一つの問題点。あなたは指示した安全担当者を「彼は指示したことをきちんとやってくれるはず。」と信頼しているでしょう。しかし、あなたは、自分が指示した事項について彼が行う具体的実施内容や方法を想像できているでしょうか。あなたの指示内容があなた自身で具体的に想像できていないと、指示に従って適切に業務を行っているかどうか判断できない。「やっています。記録もあります。」と「形」の報告を受けて、実施確認を行うことになりますが、果たして「指示したこと」の効果は達成されているのでしょうか。
  仮に、指示する側や指示を受ける側がこのような状況にあったとしても、「指示した」、「報告した」ことで「災害防止活動」は展開されていると認識(誤認)してしまう。
  もし、そんな現実があるとすれば、何らかの改善を行わなければなりません。
  改善対策は「具体的」指示を行うことだと思うのです。指示事項の「具体化」です。具体化を図ることで、実施のために必要な環境や条件も見えてきます。
  具体的実施事項を関係者で共有し、実施のために必要な時間確保の方法が検討され、必要なコストが明らかになり、関係者間でその具体的内容を共有して初めて、本当の実施の有無が確認できるようになります。実施もれもなくなります。
  「具体化」は実質的な災害防止活動を担保するキーワードです。

2020/03/02  (  文責 : 丸山ひろき )