ゼロ災害は達成できる 

  人が、いろいろな幸福追求のために「働く」ことで労働災害が発生することは、働く目的と相反するものであり、あってはならないものです。働くことで不幸になってはならない。中でも、死亡災害は絶対に起こしてはなりません。死亡という被害、結果は回復が絶対に出来ないからです。大切な存在が失われたままになってしまうからです。
  労働災害防止目標の一つとして「死亡災害の防止」が取り上げられることがあります。その目標に向かって、関係者が一丸となって取り組むことは、死亡災害の重大性を考えれば、当然に大切なことです。
  しかし、私は、この目標に疑問を抱いています。「死亡災害の防止」を達成するための何か特別な手法とか特別な活動があるのでしょうか。私は、死亡災害にターゲットを絞った防止対策はないと考えています。
  死亡災害は、絶対に防がなければなりません。そのために目標とすべきは「ゼロ災害」の達成なのです。「死亡」は災害の結果です。災害の結果としての被害程度はコントロールできないので、「労働災害」を根絶しなければならないのです。
  そして、私は「ゼロ災害」は達成できるものと確信しています。やれば出来る目標なのです。
  中央労働災害防止協会が提唱している「ゼロ災運動」は、「人間尊重の理念に基づき、全員参加で安全衛生を先取りし、一切の労働災害を許さずゼロ災害、 ゼロ疾病を究極の目標に働く人々全員が、それぞれの立場、持ち場で労働災害防止活動に参加し、 問題を解決するいきいきとした職場風土づくりをめざす運動です。」と説明されています。
  私はこれを「皆で具体的な危険への対処を日々積み重ねていくこと」だと思っています。そして、その結果としてゼロ災害は達成できるのです。不可能な命題ではありません。
  日々、自らの職場に潜む「あらゆる」危険、有害要因を作業前に把握し、それらを作業前に排除しておけばよいのです。働く前に危険、有害要因を取り除けば、労働災害を未然に防ぐことができるはずです。
  「労働災害をゼロにするなど、本来不可能な話であって、労災ゼロを絶対のものとするなら、仕事をしないこと。」という極めて現実的な言葉を聞かないわけではありません。安全を担当される方々のご苦労が背景にあるのだろうと思います。
  しかし、私は、やはり「ゼロ災害」は達成不可能ではないと信じて止みません。振り返った時、労働災害には必ず原因があって、その原因が事前には把握できないものであったなどという例を知りません。
  一番大切なのは、本気になることです。逃げないことです。出来ない言い訳を考えないことです。
  本当の意味での「安全第一」を実践することだと思うのです。

2020/05/19  (  文責 : 丸山ひろき )