注意を払っても「危険」は「安全」にならない 

  パイプ椅子や回転する事務椅子を踏み台にした経験のある人は多いと思いませんか。私もその経験者の一人です。どういうときにその経験をしたか思い出してみると、「手の届かない高い場所、例えばロッカーの上の荷を取る場合」、「手の届かない高いところの汚れ、例えば窓ガラスの拭き掃除をする場合」、「蛍光灯が切れたので椅子を使って机に上がり蛍光管を取り替える場合」などです。
  皆が、危ないとは感じながらも「注意をすれば大丈夫」と考えて、ついついこのような行為をしてしまいます。「省略」です。そして、注意しているはず、大丈夫なはずなのに、労働災害はこのような作業において発生しているのです。決して珍しい話ではありません。
  鳥取労働局のデータでは、墜落・転落災害の起因物は「はしご、脚立、踏み台等」(椅子が含まれているかどうかは判りません)が第2位です。ちなみに第1位は「トラック」です。気をつけましょう。
  つまり、多くの人たちは「危ないけれど注意すれば大丈夫」と思って、省略行為を行い、結果として被災するのです。自分だけは大丈夫と思うのは大きな勘違いです。「危険な行為」は「自分の注意力」ではカバーできないのです。ましてや「危険な行為をする自分の注意力」など、あてになるはずはないのです。椅子を踏み台にすることは「危険」なのです。椅子を踏み台などにしてはならないのです。危険なことはしてはならないのです。(しつこい!)「自分の注意力」はゼロ災達成には無力なのです。
  では、高いところの荷を取るための安全対策は何なのでしょうか。
  まずは、「安全な専用踏み台」を利用することです。そして、それを「手間をかけずに利用できる場所に備え付ける」ことです。
  すると、「それは判っているけど、そんな置き場所はない」との声が聞こえてきます。
  本当に置き場所がないのでしょうか。何とかしようと本気で検討した結果の声でしょうか。排除できる不要なものはないか、すなわち「整理」できないか。「整頓」でスペースが作れないか。安全性を最優先する前提で、専用踏み台の場所確保ために、我慢してでも何か撤去できないか。などなど、本気で検討することを避けてはなりません。そして、それでも場所が確保できなければ、妥協策として「不便だけれど別の場所で止むを得ない、いつも使うものではないので、使うときに少し我慢をして、でもルールだけは守ろうね!」という合意形成の方法もあるかもしれません。
  もっとも、本質安全化は「使うものを手の届かない高いところにおかないこと」ですけれどね。

2020/07/10  (  文責 : 丸山ひろき )