「知識不足」は「危険要因」
安全(災害)に関する知識の欠如は、設備や環境に係る安全措置の不備・欠陥と同様に、あるいは、それ以上の危険要因であると思います。
たとえば、パイプ椅子について考えて見ましょう。故障していないパイプ椅子には通常、特段の危険はありません。しかし、使い方を間違えると事故の起因物になってしまいます。踏台として使う場合、「パイプ椅子の上に立つと、立つ場所によっては椅子が閉じてしまうから危ないこと」と「人はいくつものことに同時に注意を払い続けることは難しいこと」を知っていれば、パイプ椅子は危険なものであることが分かります。パイプ椅子を踏み台代わりに使用することは危険であり、例えば、面倒でも、専用の踏台を持ってきて作業を行わなければならないという一つの結論が得られるわけです。後は「省略という人間特性」を知っていて、自己の行為を監視し、管理者も部下の行為に注意を払い、同僚も声を掛け合うことで、パイプ椅子を踏台替わりに使用することによる転倒、墜落事故を防ぐことができるわけです。
逆に、本人や管理者など関係者の知識が不足していれば、危険と知らずに、危険に気付かずに作業を行い、結果として転倒事故・墜落事故が発生する可能性が極めて高くなります。
知識不足は職場に潜む重大な危険要因なのです。「知る」と「知らない」では大違いです。
危険に対する感性は「事故」や「ヒヤリ・ハット」経験などにより高められるものです。しかし、これらの経験に取って代わって感性を高めるものが「知識」であると考えています。
出来れば、労災事故などを経験することなく危険に対する感性を高めるべきです。そのために、職場での安全衛生教育が重要となるわけです。知識を付与・取得するための教育です。
私は、仕事を通じて労働災害防止を考える機会に恵まれましたが、「危険」についての感性は、僅かではありますが、それによって身についたと思っています。
知識を身につけることに関しては「危険予知」についての勉強が大いに役立ってきました。また、逆に「危険予知」は知識が欠かせないもの、加えて「危険予知」は訓練が欠かせないものと感じています。皆様にも「危険予知」にご興味を持っていただきたいと思います。
2020/07/20 ( 文責 : 丸山ひろき )