安全管理、災害防止は「人」が担う
事業所の安全衛生管理や災害防止に関して実施すべき事項やあるべき姿は、関係法令等や行政通達、各種の社内規定などでその詳細を知ることができるようになっています。
そして、当たり前のことですが、それらを実際の場面で運用するのは「人」です。各事業所の安全衛生管理、災害防止は「人」が具体的に行動することによって確保されているのです。
しかし、私は、ややもすると、このこと、すなわち、「人」の要因を考えないで安全衛生対策が議論又は検討されている場面があるのではないかと感じることがあります。
例えば安全点検で不良箇所を発見した場合です。「安全カバーが外れている」、「廊下が水でぬれている」などの指摘をした場合、「カバーを取り付けておくこと」、「水をふき取っておくこと」という改善措置を指示し、改善状況を報告させるのが通例です。
しかし、「カバーを誰が外したのか」、「外した理由は何か」、「誰が外れていることに気づくべきだったのか」、「なぜ気づかなかったのか」、「本当に誰も気づかなかったのか」、「気づいたのに見逃したのではないか」、「管理者が何故知らなかったのか」、また「なぜ水でぬれていたのか」、「なぜ誰も気づかなかったのか」、「気づいた者がなぜ放置したのか」など、その不良状態が生じたことの背後にある「人」に着目して、不良状態の発生原因や不作為の原因を明らかにしようとしているでしょうか。
点検担当者は、改善措置を指示するときに改善後の対象のあるべきイメージは持っているのでしょうが、誰が行うべきか、何故できなかったのかなどの「人」の要因を具体的に把握して、有効な再発防止対策を指示しなければなりません。
「担当者がしっかりと管理すること」、誰でも良いから「すぐに改善措置を講じておくこと」としか指示していなければ、同じ「不良」状態が、おそらくまた生じてしまうでしょう。
そして、本当の再発防止対策は講じられないままとなるのです。おそらく、誰も気づかないままに。
2020/09/01 ( 文責 : 丸山ひろき )