トップが行うこと 

 平成29年11月に神戸市で開催された「全国産業安全衛生大会」に参加させていただきました。初日の総合集会やその後の特別セッション、各種の講演会、事例報告などを聞かせていただきました。いろいろな示唆に触れることができた、興味深い3日間でした。
 この経験のうち、2つのことを記載させていただきます。
ゼロ災  一つは、ある講演者の「私は、自分の担当する組織においては、ゼロ災を達成することができる」という発言です。その発言は、その方のこれまでの活動に裏づけされた確信に基づく自信です。全ての職場でこのような方々が活動して「ゼロ災」が実現できるのです。私には何もできませんが、この発言を聴いて素直にうれしくなれました。そうです。「ゼロ災」は達成できるものなのです。
 もう一つは、この会場で配布された中災防の「安全と健康(大会号外)」に掲載された、昨年9月に開催の「製造業安全対策に関するトップ会談」での旭硝子(株)代表取締役会長である石村和彦氏の基調講演についてです。部分的にではありますが、是非紹介させていただきたく、私のフィルターを通してその概要を記載いたします。

 「安全なくして生産なし」とは本田宗一郎氏の言葉であり、その心を知った時、深い感銘を受けられたそうです。
 そして、トップがやることは、重篤災害発生のリスクを「下げる」ことと安全意識を「上げる」ことの二つであり、これを徹底することだとおっしゃっています。
 また、部下を被災させた過去の経験から、企業の行動指針の中に「部下を家族と思って守ること。安全衛生活動は安全衛生スタッフがやるものと誤解せず生産活動に携わる作業者がやるべきもの。形式ではなく本音でやること。」などを盛り込んでいること。
 はさまれ・巻き込まれ災害に結びつきやすい機械設備が多くあり、作業者の管理とか注意力に頼るだけでは限界があることから、それまで機械のオペレーターが動いている機械の中に入ってトラブル対応していたものを、機械を止めないと中に入れないシステムとした工場を稼動した結果、生産性が一気に下がったこと。
 そして、現場からは「こんなことでは生産ができない」との苦情が出されたこと。しかしながら、この取組を徹底してやろうとの姿勢で取り組んだ結果、機械のトラブルが大幅に減少して生産性が向上したこと。
 まとめとして、安全活動に果す経営者の役割として、「安全なくして生産なし」を、とにかくずっと言い続けることだと締めくくられ、「トップは強い意志をもち、ありとあらゆる手段を使って社内の隅々まで安全意識を浸透させること」、「機械に対しては安全意識に頼らず徹底的に対策を講じること」、「教育とか安全に対する費用は将来への投資であると確信すること」などが重要であると思っている。

 などと記載されています。組織のトップとしては、災害を減少させるために正しいと信じたことは、目先にとらわれず、継続する姿勢を示すことの大切さを示したものと読ませていただきました。「安全第一」に本気になり、その本気を具体的に社内、組織内に見せていくこと、その本気を継続することが大切ということをおっしゃっているのだと感じた次第です。
トップ」が労働災害を無くす「その人」なのです。

2020/10/13  (  文責 : 丸山ひろき )