「安全第一」 (その2 )
労働災害が減少した最近は、身近で事故の悲惨さを実感することも少なくなりました。事故は見聞きしないにこしたことはありませんが、労働災害防止には事故情報が有用なことがあります。「職場のあんぜんサイト」というウエブページから労働災害事例が入手できますのでご利用ください。また、労働災害事例には、「災害の原因」と「再発防止対策」がセットで示されていますので、これらも有効にご利用ください。
ところで、このように申し上げながらも、入手した事例に示されている「原因」と「対策」には、おそらく多くの皆様にとって「気づけなかったことでもなく、珍しいことでもなく、当然に考えられること」ばかりが記載されているのではないでしょうか。後で検討すれば当たり前のことばかりです。本当は、あらかじめ「対策」が必要と気づいていた人がいるはずです。私は『何故、事故が起こる前に、危険と気づいた誰かが声を上げなかったのか、危険に気づいていた誰かが、対策の必要性を訴えなかったことが、真の「災害原因」ではないのか。そして「再発防止対策」は「危険を認識した者が声を上げられる環境を作ること」である。』と災害事例に触れるたびに思うのです。
危険に気づく、気づかないは、人それぞれ、危険の評価も人それぞれ、気づいた危険への対応方法も人それぞれだと思います。「危険」を知るには知識が、教育が、経験が必要です。そのため、現実の危険に対しては、互いに助け合わなければなりません。自分が知っていて他者が知らないことは沢山あります。他者が知っていて自分が知らないことも沢山あります。気づいたら声を出すことです。情報を共有することです。危険を声に出さずに誰かが亡くなったらどうですか?救えた人を救わなかった当事者になってしまいます。被災者側に立って想像してみてください。「何故、助けてくれなかったのか」と恨みませんか。
危険を「声に出す」、危険を「共有する」環境を作るのは、管理者の役割、企業の義務です。そして、声を出した人に心から「感謝」すること。対応に手間がかかっても、納期が厳しくても、危険排除の方策をまず「第一」に講じることです。折角の情報が共有できたのですから、無駄にしないことです。
事故、災害を防ぐための安全投資の価値はわかりにくいものです。そして、行うべき投資を怠って事故が起こったとき、反省、後悔という形で価値がわかるのです。有益な投資であると信じるしかありません。安全投資が有益であると信じるに足る事例は見渡せばいくつも転がっています。必要な何かをしなければ事故はいつか必ず起こるのです。
更に、私たち一人ひとりが災害防止のために心がけることは『本当に「安全第一」ですか?』と常に自己に問いかけること。「はい」と答えられないときは、「まず、立ち止まる」こと。そして、躊躇せずに、仲間(部下にも上司にも)に危険を知らせること。仲間で「次」を考えること。また、「次」を考えるときのよりどころは「安全第一」であること。これをいつも実践することです。
2020/12/01 ( 文責 : 丸山ひろき )