避難勧告等に従って行動すること ( 正常性バイアス・確証バイアス )
平成30年7月豪雨と呼ばれて、平成30年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で記録された台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨により発生した大きな被害が発生しました。
この時の反省点は、避難勧告等が発令されても具体的避難行動につながらず、実際に避難する住民が少なく、その結果、避難遅れが多く発生したことです。
この反省点を受けて、令和元年3月に、避難勧告等に関するガイドラインが改定されました。その概要は「警戒レベルを5段階として、情報と取るべき行動の対応を明確化したこと。具体例として、警戒レベル3では、高齢者等は避難すること、その他の住民は避難の準備を行うこと。警戒レベル4では避難すること。」などと示されています。
そして、その8月末の九州地方の豪雨には、新しいガイドラインの運用が行われました。例えばこんな具合です。「○○市の全域に警戒レベル4、避難勧告が発令されました。住民の皆様は速やかに全員避難を開始してください。避難場所への避難が危険な場合は、近くの安全な場所に緊急避難するか、屋内の高いところに緊急に避難してください。」
ところで、この情報に接しながら、自分はどのように行動するだろうかと想像しています。
私の暮らす市全域に警戒レベル4、避難勧告が発令されたときのことを想像してみます。豪雨による被害といえば、河川の増水、急傾斜地のがけ崩れ、土砂崩壊などが想像できます。ところが、私の住んでいる地域は、近くに山も川も急傾斜地もありません。さらには他の地域より高い場所にあり豪雨被害の恐れはないと考えています。なので、もし、自分の住む地域に警戒レベル4が発令されたら……、正直にいえば、おそらく避難しないでしょう。そして、行政に対して「市域全体で避難レベルを発表され、避難勧告を出されてもな~~。」などと不満さえ抱くかもしれません。
人は、予期せぬ出来事が発生したとき、いちいち敏感に反応していたら心が疲弊してしまうので、その防御反応として、ある程度の限界までは正常の範囲内のこととして処理するメカニズムが備わっているといわれています。自然災害の危険など、自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても「自分は大丈夫」、「今回は大丈夫」、「まだ大丈夫」と評価してしまいまいがちです。このため、客観的には災害の危険性に直面しているのに直ちに避難行動をとろうとしないのです。
この特性を「正常性バイアス」と呼びます。
自分の住む地域に警戒レベル4が発令された場合に私が考えることのもうひとつは、30年近く住んでいるけれど、これまで一度も豪雨被害は発生していないということです。過去の無災害を避難行動をとらないという判断の正当性の補強としているのです。
突然ですが、血液型で性格が特徴付けられるという話があります。血液型で性格が決まるのは本当でしょうか。実は、相手の血液型がわかると、巷で言われている型の特徴ばかりが目に付いてしまい、「やはり血液型で性格は決まるのだ」と納得するのです。人には他の血液型の特徴だって探せばあるはずです。
このように、血液型性格決定を信じている人は、都合のより情報ばかりを集めて、都合の悪い情報は排除しているのです。
このような特性を「確証バイアス」と呼びます。
「正常性バイアス」も「確証バイアス」も、誰にでも備わっています。
私が、市全域に警戒レベル4として避難勧告が発令されても、避難しないかもしれないと想像するのは、正に「正常性バイアス」と「確証バイアス」が備わっているからです。そして、おそらく現実に被災したときに「もっと早く避難していればよかった」と反省するのだと思います。
私も、自分が住んでいる地域を含んで豪雨による警戒レベル4が示され、全員緊急避難勧告が出されたら、バイアスのあることを自覚して、あれこれと否定的なことを考えず、率先して避難場所へ移動できる人となるよう努力いたします。
何事もなく事態が収まれば、「何もなくてよかったね」と皆で喜び合えばよいのですから。
2021/06/02 ( 文責 : 丸山ひろき )