「リスクアセスメント」と災害防止対策について思うこと (1)
リスクアセスメントに関する私なりの整理の一端と、整理をして気付いたことを述べさせていただきます。
(はじめに)労働災害防止に関して「リスクアセスメント」という言葉は、正しくは「リスクアセスメント等」と呼ぶべきであり、以下「等」を強調しておきます。
いまさらですが「アセスメント」とは「事前の予測・評価」と説明されます。そして「リスクアセスメント等の実施」については労働安全衛生法第28条の2に規定され事業者の努力義務とされています。
リスクアセスメント等については、その実施タイミングや必要な措置検討などの具体的内容を「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」として厚生労働省が示しています。この指針からリスクアセスメント等の重要な留意点が次の二つであると思っています。
まず、アセスメント実施のタイミングですが、それは指針に「5 実施時期」として記載されています。
ア 建設物を設置し、移転し、変更し、又は解体するとき。 イ 設備を新規に採用し、又は変更するとき。 ウ 原材料を新規に採用し、又は変更するとき。 エ 作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき。 オ (1) 労働災害が発生した場合であって、過去の調査等の内容に問題がある場合。 (2) 前回の調査等から一定の期間が経過し、機械設備等の経年による劣化、労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合。 |
アからエについては、それらの作業を開始する前に実施することが必要であるとしています。
また、計画を策定するときにも実施することが望ましいとしています。
次に、必要な措置の検討です。「次に」としましたが、実はこれが一番大切な着眼点でありリスクアセスメント等の「目的」です。指針に「10 リスク低減措置の検討及び実施」として「リスク低減措置内容の検討における優先順位」が示されています。
1 危険な作業の廃止・変更等、設計や計画段階から労働者の就業に係る危険性又は有害性を除去又は低減する措置 2 インターロック、局所排気装置等の設置等の工学的対策 3 マニュアルの整備等の管理的対策 4 個人用保護具の使用 |
そして、検討に当たって、
「リスク低減に要する負担がリスク低減による労働災害防止効果と比較して大幅に大きく、両者に著しい不均衡が発生する場合であって、措置を講ずることを求めることが著しく合理性を欠くと考えられるときを除き、可能な限り高い優先順位のリスク低減措置を実施する必要がある」と記載されています。
すなわち、「いかに労働災害を防止するためとはいえ、そこまでの措置を会社に求めることは、誰が考えても過剰だろう」というレベルでなければ、まずは危険、有害要因そのものを無くすこと。それが合理的・客観的に困難であれば、設備的(工学的)対策で危険、有害要因を閉じ込めてしまう、作業者との接触を遮断してしまうこと。それも合理的・客観的に困難であれば、管理体制等を含めたマニュアルを整備して、安全に運用、作業されるよう管理すること。これも合理的・客観的に困難という事情があれば、最後は、作業者の保護具使用等の対策を行う、という順序で検討を行えというわけです。
(結論)行うべき対象に対して作業が実施される前にリスク評価を行い、リスクを除去、軽減するための必要な対策を講ずることを「リスクアセスメント等の実施」と呼ぶのです。
2021/07/13 ( 文責 : 丸山ひろき )