「労働安全衛生法令を守る」こと・「労働安全衛生法令に基づいて対策を講ずる」ということ (3/3)
作業主任者を例に書きましたが、その他の職務等においても同様に検討すべきことがあると思います。
労働安全衛生法令は、過去の重大な災害をもとに、再び同様の災害を発生させないためにとるべき措置を定めているのですが、法律が刑事罰を備えていることもあって、過大な措置義務を国民に課すことは不適切であり、その結果、国民合意が得られる範囲の義務が規定されているのだと思います。すなわち、「法令を遵守することは災害防止に有効であるけれども、法令を守っていれば労働災害を防止できるということではない」ということです。
それを前提とすれば「法令の個々の規定を、事業所の実態に即して具体的に展開する検討が加えられ、適切な措置が講じられる」ことによって災害防止の目的が実現される。そのために関係法令を活かすべきではないでしょうか。
例えば、安全管理者、衛生管理者が管理すべき技術的事項は安全衛生法第10条に規定されていますが、それら管理すべき具体的内容は各事業所で書き直していくことが必要です。そして、その具体的内容を事業所全体で共有、合意することが欠かせません。共有と合意には、関係する全員が同じ認識を持つことも含まれます。誰もが各管理者が行うことを具体的にわかっているということです。
同様に、安全衛生推進者等は事業主等が自ら負うべき災害防止の措置義務を果たすため、具体的に示された業務を担当する者であるということを周知したうえで、法令に基づき氏名を周知する必要があります。法令で規定されているのは「掲示等による氏名の周知」ですが、それだけ行えば法令違反は指摘されないものの、法律の目的達成のためには決して十分ではありません。
職長についても同様です。職長の「職務に関する周知」の規定はないと思いますが、一部の業種には職長等教育が義務付けられ、労働者の直接指導、監督のための知識を付与することとされていることから、職長に対しては行わすべきことを具体的に示し、また、職長の指示の下で働く関係者へは、職長が事業主の指示により行うこととされている内容の周知を行うことが法令の意図に沿うものであると考えます。
書ききれませんが、その他の災害防止のための各担当者の役割等についても同じことが言えます。
労働災害を防止するためには、「労働安全衛生関係法令を守る」ことだけではなく「労働安全衛生法例に基づいて対策を講ずる」ことが本当の意味での法令順守ではないかと思います。 (戻る)
2022/02/15 ( 文責 : 丸山ひろき )